ss【キーテープ】

ショートショート作品

 

鍵屋兼発明家という妙な職業の友人から「キーテープ」なる発明品をもらった。

 

なんでもこのテープは貼るだけで鍵の役割を果たすらしい。

 

例えば金庫。

 

金庫にテープを貼り付けると、その金庫はテープを剥がさない限り決して開かなくなる。

 

そのテープを剥がせるのはテープを貼った本人だけ。

 

「金庫だけじゃない。家のドアなんかに貼っておけば最強の防犯になるぜ。何せピッキングをされても扉は決して開かないんだからな」

 

とは友人談。

 

最近このあたりで強盗が頻発しているという噂を聞きつけてこんなものをくれたのかもしれない。

 

私の家に金庫があることも知っているから、もしかしたら私の為にこんなものを作ったのかもしれない、なんていうのは考え過ぎか。

 

「最初の一つは無料。もしまた欲しかったらその時は買ってくれよ。友人価格で安くしとく」

 

そう言われてはもらわないわけにはいかない。

 

とにかく私はそのテープの効能を試してみることにした。

 

まず家のドアにテープを貼ってみる。

 

これが普通のテープならば、ドアを開ければテープは簡単に切れてしまうはずである。

 

しかしテープを貼った後にドアを開けようとしてみても、ドアはびくともしなかった。

 

窓などで試してみるが、効果は同じ。

 

なるほど、これは優れものである。

 

もし仮に合鍵を作られたり友人の言うようにピッキングされたりしてもこのテープさえ貼っておけば防犯上は完璧というわけだ。

 

もちろん金庫にもテープを貼っておいた。

 

とりあえず無料でもらったテープを毎日使っても一年は使えそうだ。

 

私は夜、寝る前にドアをテープで塞いでおくことにした。

 

しかしその習慣が仇となってしまったようだ。

 

私はすっかりテープの効能にあぐらをかき、ドアに鍵を閉める習慣がなくなってしまっていたのだ。

 

そしてある日の夜、私はドアにテープを貼るのを忘れて眠りについてしまった。

 

 

 

目が覚めると、手足を縛られていた。

 

マスクをかぶった強盗は寝室の金庫を開けようと悪戦苦闘している。

 

「あっ……!」

 

私が叫ぼうとすると、強盗は手近にあったテープで私の口を塞いだ。

 

助けを呼ぼうにも、もごもごという音が出るだけで声が出せない。

 

強盗は尚も金庫を開けようと頑張っているが、それが無理だと分かると今度は戸棚を物色し始めた。

 

私はその隙に手元に置いてあった防犯ブザーを鳴らした。強盗が頻発していると聞いて用意しておいたものだ。

 

ビーッという大きな音に強盗は驚き、慌てて窓から逃げていった。

 

それからしばらくして、警察がやってきた。防犯ブザーの音を聞いた近隣の住民が通報してくれたらしい。

 

「大丈夫ですか!?」

 

一人の警察官が声をかけてくれる。どこかで顔を見たことがあると思ったら、前に「強盗事件が頻発しているので戸締りをしっかりしてください」と忠告しに来てくれた警察官だった。

 

彼が手足の拘束を解いてくれて、口を塞いでいるテープもはがしてくれる。

 

「大丈夫ですか? 強盗はどちらへ逃げて行きましたか? 顔は見ましたか?」

 

そう尋ねる彼に、私は「窓……」と言いかけて、慌てて口を閉じた。

 

彼の手の中で丸まっているキーテープを見ながら、私は恐ろしさにガタガタと震えた。

 

(了)

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