新作ショートショートを書きました。

先日、下北沢にある「B&B」という書店で開かれたイベント、
「田丸雅智×佐藤文香 気まぐれショートショート放談」
に参加した際に、田丸さんのショートショート講座で作成した原案を基にショートショートを書きました。
講座は非常にためになる内容で、この方法であればいくらでもショートショートが創れそうだ! と、とても嬉しい気持ちでいます。

以下、そのショートショートになります。

【ふしぎな駄菓子屋】

我が家の近所には、不思議な店がある。

その店は、今ではあまり見る事のできなくなった昔ながらの駄菓子屋なのだが、これがどうも変わっている。

まず、店の入り口にでかでかと
「大人、入店禁止」
と書かれた張り紙がしてある。さらにそのすぐ横には
「当店の駄菓子は、大人が口にすると爆発します」
と書かれた張り紙がしてあるのだ。

さらにもう一つのおかしな点。それは、店を出る時の子供たちの表情だ。
店を出る子供は皆、なんとも晴れやかな顔をしている。最初は「駄菓子を買ったのだから当たり前か」と思っていたのだが、店に入る前、この世の終わりかとい う風に落ち込んでいるように見えた子供さえも、店から出てくる時には不自然なくらい晴れ晴れとした表情をしているのだ。

一体、店の中はどうなっているのだろう。どんなものが売っているのだろう。本当に駄菓子なのだろうか。

ついに我慢ができなくなった私は、店を出てきた子供たちに声をかける事にした。
「君たち、ちょっといいかな」
晴れやかだった子供たちの顔が、一瞬にして不安げな表情に変わる。
「ここのお店、何屋さんなの?」
私がそう聞くと、一番背の高いガキ大将風の少年が
「駄菓子屋」
と答えた。彼の手には、昔私も好んでよく食べていたスナック菓子が握られている。私がそれを指さして
「それ、おいしそうだね」
と言うと、少年はスナック菓子を背中の方へと隠してしまった。
「おじさんにも一つくれない?」
できるだけ怖がらせないように笑顔を作りながらお願いしてみたが、少年は
「これ、大人は食べちゃだめだから」
と言って走り去ってしまった。他の子供たちがばたばたと彼に続く。
すると、一番背の低い、恐らく最年少と思われる女の子のポケットから飴玉が一つ、転げ落ちた。女の子は気づかずに行ってしまう。
拾い上げてよく見ると、これも昔ながらの飴玉だった。包み紙に懐かしいキャラクターが印刷されている。特に不審な所はない。
包み紙を開けると、琥珀色のおいしそうな飴玉が出てきた。やはり、普通の飴玉だ。
私は店の方を伺い、誰も見ていない事を確認すると飴玉を口に入れた。
すると、頭の中に

「すうがくは、べんきょうしなくていいぞ!」

という声が響いた。驚いた私は辺りを確認したが、周りには誰もいない。
しばらくすると、今度は

「おとしだまは、すぐにつかっちゃおう!」

という、昔なにかのテレビ番組で聞いたことのあるような甲高い声が頭の中に響いた。
一体これは、どうなっているのだ。その後も

「きらいなたべものは、むりしてたべるとからだにわるいよ!」

「ゲームだけやっていれば、りっぱなおとなになれるぞ!」

等といった、子供に都合の良い言葉が頭に鳴り響いた。
声は段々と大きくなっていき、次第に気分が悪くなってきた私は、ついにはひどい目眩に襲われた。
声は尚も大きくなっていく。

「ごはんよりもおかしのほうがえいようがあるってしってた!?」

「よる、はやくねすぎるとこわいゆめをみるよ!」

「はみがきをしすぎると、いればになっちゃうよ!」

声が聞こえる度に頭が激しく痙攣する。段々と意識が遠のいていき、私は道ばたに倒れた。もはやなんと言っているのかさえ分からない。
一度声が止み、カメラのフラッシュのような光が見えたなと思った次の瞬間

「おとなはみんな、うそつきだよ!」

という爆音が頭に鳴り響いて、私の意識は完全に消し飛んだ。

(おわり)

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