ss【爆弾フルーツ】

友人から「爆弾フルーツ」の種をもらった。

友人によると、それは世にもうまいフルーツだということだった。

育て方は簡単。

土を入れた鉢に種を植えて水をかけるだけ。

栄養剤などは必要なく、ただ水やりだけ忘れなければちゃんと育つらしい。

ただし一つだけ注意が必要なのは、爆弾フルーツには消費期限……もといタイムリミットがあるということだ。

爆弾フルーツを植えてから約三日後、爆弾フルーツは花を咲かせた後に実をつける。

その実が赤く熟れた頃が食べごろだ。

というか、その時に食べないといけない。

もし爆弾フルーツが赤く熟れているのに食べないと、爆弾フルーツは爆発して大変なことになるらしい。

俺はさっそく爆弾フルーツの種を鉢に植えた。

突然植物を育て始めた私に、妻は不思議そうな顔をしていた。

種を植えてから三日後、爆弾フルーツは赤い実をつけた。

俺はさっそくその実を取って、水で洗い、皮をむいてから食べてみた。

「なんだ……これ」

それは今まで食べた事がないような味だった。

水々しく、それでいてエネルギーに満ち溢れたジューシーな味。

食べたそばから身体中にパワーがみなぎってくるようだった。

友人がくれた爆弾フルーツの種はまだたくさんあったので、俺はすぐに新しい種を植えた。

何回か爆弾フルーツを育ててみて分かった事だが、爆弾フルーツは爆発する直前になるほど美味しさが増すらしい。

俺は、爆弾フルーツがより赤く、より大きく熟れるまで待ってから収穫して食べた。

危険だとは分かっていたが、だからこそ実を食べる時は何物にも代えがたい幸福感を得られる。

そして、その日も俺は爆弾フルーツを収穫しようとしていた。

おそらく爆発寸前だと思われるほどに実は膨らみ、赤黒く熟れていた。

思わずよだれを垂らしながら実に手を伸ばした時、「あなた」という声が背後から聞こえた。

振り向くと、妻が立っている。

「前から気になっていたんだけど、それ、なに」

「あぁ、いやぁ。友達からもらったやつだよ」

「それで?」

「あぁ、いやぁ……」

「あなた、いつも夜中こっそり起きてそれ食べてたでしょ」

妻にはバレていないと思っていたのだが……。

「見せてよ、それ」

「だ、ダメだよ」

「いいでしょ」

そう言って妻が俺の手から鉢を奪う。

「へぇ……綺麗な実ね。これ、なんていう実なの」

「な、なんでもないから。ほら、返して!」

実はさらに大きくなっている。もう破裂寸前だ。

「は、早く! ほら!」

「そんなに慌てなくてもいいじゃない。そんなに美味しいの?」

妻がそう言った瞬間、爆弾フルーツから”カチッ”という音が聞こえた。

「うわぁぁあぁあ!」

俺は思わずそう叫びながら家を飛び出した。

爆発する……!

家の前の道路に転げ落ちるようにして身を伏せた。

だが……。

「爆発……しない?」

家の中からは爆発音は聞こえてこなかった。

どういうことだろう。

爆発するというのは嘘だったのだろうか。

俺は恐る恐る家に戻った。

と、そこには妻が立っていて、鉢を抱えたまま仁王立ちをしている。

鉢には、食べごろを過ぎて枯れてしまったのか、クタクタにしおれた爆弾フルーツが横たわっていた。

そうか、この実は”不発”だったんだ。

実が不発だと分かって安心し、床にへたり込んだ俺に「なんで逃げるのよ!? なんなの、これ!」と妻の怒りが爆発した。

(了)

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