2020-08

ショートショート作品

消し墨の文

 昇降口の下駄箱を開けると、一通の手紙が入っていた。  なんだろうと思い封を開けると、それはどうやらクラスメイトの葉月さんからの手紙のようだった。  僕は内心かなりドキドキしながら手紙の中身を読んだ。 「三...
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揉み課

「じゃあこの話、よく揉んどいてくれ」 会議の終わり間際、課長は僕と伊藤先輩に向かってそう言った。 「はい」と二人、返事をして会議室を出る。 「早速行こうか」と伊藤先輩が言ったので、僕たちは三階フロアに上がっ...
ショートショート作品

涙コロン

 自分が人とは違うことに気づいたのは幼稚園に入った時だった。  初めて家以外の場所で知らない人たちに囲まれて過ごすことになった私は心細さにいつも泣いていた。  そして私が泣くと、男の子がはやし立てるのだ。 ...
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星空包装紙

   友人からフィンランドのお土産をもらった時、私は正直お土産の中身よりも包装紙に興奮した。 「え、何これ……!」  包装を解いた私は思わず驚きの声をあげた。  お土産を包んでいた包装紙、その裏側に星空がプリ...
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一夜湖

「今夜、空いてるか」 釣り仲間の友人が電話をかけてきて、藪から棒にそんなことを聞いた。 「空いてるには空いてるけど、なんだい」 「釣りに行かないか」 「今夜って……夜釣りか」 「そう」 ...
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