ショートショート作品

ステルス巻尺

 ステルス巻尺というものが発売された。  その巻尺を任意の範囲に広げると、範囲外に動けなくなるという代物で、元は犬用に発売されたものらしい。  決まった時間になると、巻尺の範囲が狭まり、巻き取られて中心にある場所に帰らない...
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パソコンのしつけ

 格安のパソコンがあるらしい。  値段はすごく安いのだが、使うには躾が必要だとのことだ。  僕はそんな格安パソコンを買ってみたのだが、噂通り、全然言うことを聞かない。  しかし上手に躾ければ高性能になるらしいので、...
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送り火の子

 お盆の季節に、送り火を焚いてご先祖様を送り出していた時のこと。  木の影から一人の女の子がこちらをじっと見つめていた。  どこの子だろう。近所にこんな子いたかな。  そんな風に思っていると、やがて女の子はいなくな...
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家計簿侍

 家計簿侍、という侍さんがいるらしい。  家計簿の無駄を切ってくれるのだとか。  私はさっそく侍さんに家計簿を切ってもらうことにした。  やってきた侍さんは私が広げた家計簿をじっと見つめた。  そして「はっ...
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耳催眠術士

 耳催眠術士という人がいるらしい。  耳垢に催眠術をかけて、すっきりさせてくれるのだ。  僕は、その耳催眠術士さんの元に行ってみることにした。  耳催眠術士さんは女性で、なんだか僕はどぎまぎしてしまった。 ...
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地下室の耳

 うちには地下室がありました。  そして地下室の壁に耳がついていました。  ある日、私がその耳をこちょこちょとくすぐると、家全体が大きく揺れました。 「地震だぁ!」  両親が慌てたように家から出てきました。...
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在宅保育園

 そろそろ時間だ。 「よっちゃ〜ん」  近所に住む沙織が子供を連れて我が家にやってきた。  沙織は昔からの友達で、沙織が近所に住んでいたことは私にとって幸運だった。  子育ての愚痴や不満なんかを気兼ねなく話...
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夢に見る車両

 よく覚えている夢がある。  電車に乗っている夢だ。  夢なんてすぐに忘れてしまうのに、その夢はなぜかよく覚えている。  そんな電車に乗る夢を、起きている時に見た。  起きている、というべきか。  ...
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あの子のリボン

 小学校の頃、同じクラスに髪の長い女の子がいた。  その子はいつも赤いリボンで髪を結いていて、僕はよくそのリボンを取るイタズラをした。  女の子はリボンを解かれるたびに怒った。  それでも何度も何度もリボンを解いた...
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緑の音楽隊の話

 最初の1人はトランペットだった。  トランペット奏者は森の中にある開けた場所でトランペットを吹いていた。  奏者が演奏をやめると、いつのまにか奏者の周りに草木が生い茂っていた。  奏者は自らの音楽にそういう効能が...
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