ショートショート作品

値下がり履歴書

「随分値下がってるな」  僕の履歴書を見た面接官が顔をしかめる。  僕の履歴書には【右小指破損。-30,000円】などと値下がり状況が記録されている。  僕たちアンドロイドは製造された時に一番高い値がつく。 ...
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縁側にて

 前からずっとやってみたいと思っていたことを、今日やってみることにした。  私はお猪口と徳利を縁側に置いた。  まだ日は明るい。  今日は平日だ。  仕事を引退し、私は晴れて自由になった。  ずっと...
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伝説のデスク

 私の勤める会社には「伝説のデスク」というものがある。  そのデスクは営業部のあるフロアの隅に置いてある。  そこは誰の席でもない。  デスクは、かつて伝説の社員と評された社員のデスクなのだそうだ。  業務...
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きびだんごさんの飴

 ここに「きびだんごさんの飴」がある。  そういう名前のお菓子ではない。  私の勤める会社には「きびだんごさん」というあだ名の先輩がいる。  男性の先輩なのだが、面倒見が良くたくさんの社員から慕われており、彼は他の...
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山のお守り

 僕は山が好きだ。  今も山に登っている。  ここは全然有名な山ではない。  そういう山はもうほとんど登ってしまったのだ。  でもこういう山も嫌いではない。  山は有名だからいい、ということもないの...
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地図上の浮き輪

 私はトイレに大きな日本地図を貼っている。  都道府県の場所と名前を覚える為だ。  大人になり、漁師をしているのに、これらをきちんと覚えていないのでトイレで特訓しているのである。  と、地図上の太平洋側に、何か小さ...
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場沸かし機

「素晴らしいものを発明したぞ」 「なんですか」 「場沸かし機というものだ」 「湯沸かし器?」 「場沸かし機だ。会話では間違えないだろう」 「失礼しました。で、それはどんなものなんですか?」 ...
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伝説の白菜

「伝説の白菜」を取り寄せた。  その白菜は、なんでも美味しすぎて「歯が抜ける」のだそうだ。  美味しすぎて歯が抜けるなんて、そんな大袈裟なと思いながら、白菜を刻む。  普通の白菜にはない独特な香りがする。 ...
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地球の実

「地球の実」というものがあると聞いてから、私はその実をずっと探し続けてきた。  地球の実を食べれば、不老不死の力が手に入るとも、人智を超えた力が手に入るとも言われている。  地球の実はこの地球上に一つだけなっていて、後にも...
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見知らぬ町の看板

 私は適当な駅で電車を降りて、知らない町を歩き始めた。  最近のマイブームなのである。  気ままに、なんの変哲もない町を歩く。  と、犯罪予防の看板があった。 【気をつけて 夜道に潜む 闇の罠】 【...
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