ショートショート作品

微熱職人

 私は今、裸で凍っている湖のほとりにいる。  気が狂ったわけではない。  仕事に必要な行動なのだ。  私は陶芸家である。  しかし熱が出ている時でないと名作をつくれない。  最初はこうしているだけで...
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まぶた裏の夜景

 まぶたの裏に夜景を貼り付けることができるらしい。  好きな景色を見ながら眠りにつけるということで、好評なサービスのようだ。  羊を貼り付ける人なんかもいるらしい。  私は、地元の小さな山から見える夜景を貼り付ける...
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夜の防火扉

 忘れ物を取りに、僕は夜中の学校に向かった。  明日までにやらなければいけない宿題を忘れてきたのだ。  夜の学校って、何でこんなに怖いんだろう。  教室で忘れ物を取った僕は、すぐに帰ろう、と廊下に出た。  ...
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開花温泉

 私は休暇を利用して、ある温泉旅館に来ていた。  温泉にゆっくりつかって疲れを癒そうと湯に身を沈めたところ、温泉の底に花が咲いているのが見えた。  そんなこともあるのか、と珍しく思い、温泉旅館のご主人に花のことを話すと、ご...
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魔除けのドリル

 実家は、幽霊が出るなんてもんじゃなかった。  そこら中に、常にいるのだ。  おかしな音なんてしょっちゅう。  でも、そんな幽霊は勉強をすると出なくなった。  だから家族みんな、兄弟みんなで勉強した。 ...
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食う寝る食堂

 佐竹は疲れていた。  いつのまにか中年と呼ぶ以外にない年齢に達し、疲れの取れない体になってしまったのだ。  そんな時、佐竹は健康に良いと言われる、ある食堂の噂を耳にした。  食べてすぐ寝る、"食う寝る食堂"という...
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幽霊公園

 よくよく思い出してみると、おかしな記憶というのがある。  私にとってその一つが、ある公園についての記憶だ。  私はよくその公園で遊んだ。  シーソーをしたり、ブランコを誰かに押してもらって漕いだり。  で...
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湯けむりSOS

 ある頑固な温泉旅館の主人がいた。  その主人は、最近客が減ったと嘆いていた。  主人に、近所に住む人が言った。 「湯の医者がいるらしよ」 「なに?」 「温泉のSOSを感知できるんだとさ。最近客が減...
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お財布お見合い

 お財布のお見合いをしてくれるところがあるらしい。  使っているお財布を見て、相性を調べてくれるそうだ。  お財布事情を調べるというわけだが、それはいわゆる蓄えや金銭感覚だけにとどまらない。  お財布を大切にしてい...
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爆弾牛

「爆弾牛乳」という牛乳が爆売れした。  なんでも、爆弾牛乳は"爆弾牛"という牛からとれるらしい。  その爆弾牛さえ飼育できれば、大儲けできるんじゃないか、と考えた僕は、爆弾牛を飼う方法を調べ上げた。  調べるのに苦...
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