ショートショート作品

清涼の歌姫

「清涼の歌姫」の歌を聴きに妻とコンサート会場までやってきた。  何でも、彼女の歌声を聴くと心が浄化されるらしい。  清涼の歌姫のコンサートは大人気で、会場の外には違法にチケットを売るダフ屋がたくさんいた。  僕は妻...
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健康診断の星Hona

 俺は今、たくさんの宇宙船に混じって行列に並んでいた。  隣にいる相棒に声をかける。 「いつ来ても、ここは混んでいるな」 「そうですね」  ここは通称"健康診断の星"、Hona(ホーナ)である。  ...
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蜃気楼の祭り

 一人、路地を歩いていると、どこからか太鼓の音が聞こえてきた。  祭りでもやっているのだろうか。  路地を曲がったところの空が少し赤らんでいる。  やはり祭りをやっているらしい。  僕はちょっと覗いてみるつ...
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反響定位

 コウモリは超音波を発し、その反響によってまわりの物の位置を把握するらしい。  だから夜の闇の中でも自由に飛び回れるというわけだ。  これは裏を返せば、超音波の反響によって自分の位置を把握しているということだ。  ...
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野良タスキ

「すみません、これお願いします!」  突然背後から声をかけられて僕は振り向いた。  反射的に、しまった、と思う。  僕に声をかけてきた女の人は、タスキを持った手をこちらに伸ばしていた。  女の人は今にも倒れ...
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殺害予告の顛末

 会社を経営している私のところに、殺害予告が届いた。  新聞記事を切り抜いて作られた、レトロなものである。  ただのいたずら……だとは思うが、一部の人間にとって不利益になるような事業もしているので、一応警戒しておくことにす...
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越冬幽霊

「さてと、そろそろ行こうかな」  それが、私にとって冬の始まり告げる言葉である。  今聞こえたのはお母さんの声だ。  お母さんは生前、寒さに弱く、暑さにも弱かった。  だから夏の間は、私が住んでいる岩手にや...
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風化ホッチキス

 総務部で働いている私のところに、一人の営業マンがやってきて言った。 「こちらのホッチキス、とても珍しいものでして。風化ホッチキスというものです」 「見たところ普通のホッチキスのようですけど」 「えぇ、えぇ。おっし...
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おしぼり鳥

 彼とキャンプにやってきた。  前の日に雨が降ったらしく、テントの設営をすると手がドロドロになってしまった。 「汚れちゃったね」  彼にそう言うと、彼が突然ぴーっと指笛を吹いた。 「もうすぐ来るよ」 ...
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悲涙のビーカー

 新しく入ることになった会社で、人事部の人からこんな説明を受けた。 「この会社には、ちょっと変わったシステムがあります。それは"悲涙ビーカー"というものです。社員にストレスが溜まっていると判断したらビーカーに水が溜まるというもので...
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