ショートショート作品

影追いのレンズ

 店内に入ると、きちんとした身なりをした女性が「いらっしゃいませ」と私を迎えてくれた。 「本日はどのような商品をお探しでしょうか」 「コンタクトレンズをお願いしたいんです。彼が……亡くなりまして」  ここは「...
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反目ハンモック

 私は今、妻と一緒にバーベキューをしていた。  ここはとあるキャンプ場である。  美味しそうに肉や野菜を食べる妻を見て、決心が揺らぎそうになった。  いや、ここまで来て何を考えているんだ。  バーベキューを...
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服電

 単身赴任することになった私の為に、妻が新しいワイシャツと背広を買ってくれた。  その背広は仕立ても良く気に入ったのだが、一つおかしな機能がついていた。  その日も私は単身赴任先の支店から帰って来て一人暮らしの部屋で背広を...
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エンペラージェル

 俺は学生時代の友人と飲みながら仕事の愚痴を言った。  友人は疲れ切った俺の顔を見て「ヒゲくらい剃れよ」と笑った。 「それくらい忙しいのよ」 「身だしなみは大事だぜ。いいジェルをやるからさ」  そう言って彼...
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暖房ソイル

 彼と一緒にキャンプにやってきた。  真冬のキャンプである。  彼が私を連れてきてくれたのは豪雪地帯として有名な地域のキャンプ場なのだが、どれだけ雪が降っていてもキャンプができる場所があるらしい。  彼に連れられて...
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海面ソファの伝説

 私は海面ソファの伝説を調査していた。  海面を漂っているソファの噂。  そのソファにはガイコツが座っているらしい。  なんでもそのガイコツは資産家だった男で当時としてはオーパーツに近い様々な発明をさせていたらしい...
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恥ずかしがり屋なメニュー

 クラスメイトの友香から「一緒にスイーツ店に行って欲しい」とお願いされた。  友香とは挨拶くらいはするけれど、そこまで仲が良かったわけではないので驚いた。 「私? いいけど……」 「お願い! どうしても、あなたじゃ...
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生物雷光

 生まれて初めて「生物雷光」を見たのは、僕がまだ小さい頃だ。  雨雲の中を馬のような形をした光が走ったのだ。  そしてその光の馬が駆け抜けた後、大きな音がして雷が落ちた。  初めてその馬型の雷を見た後、僕は生物雷光...
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面倒がみにくいアヒルの子

 ある日、私が道を歩いていると、どこかから「ぐわー、ぐわー」という鳴き声が聞こえてきた。 「な、何!?」  慌てふためいた私があたりを見渡すと、そこにアヒルがいた。  しかしただそこにいたのではない。  な...
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夢で会ったのに

 ある日、こんな夢を見た。  目の前に長くて太い丸太のようなものが浮いている。  丸太はずーっと遠くまで伸びていた。  なんだろうと思って丸太をつついてみたら、なんだかブニブニしていて気持ち悪かった。  と...
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