小狐裕介の毎日SS

夫婦みくじ

 今年は初めて妻の実家で年越しをした。

 元旦があけて二日の日に、妻がこんなことを言った。

「近くに面白いおみくじが引ける神社があるんだよ。行ってみない?」

 妻の話では、どうやらそこでは”夫婦みくじ”というおみくじを引けるらしい。

 なんでもそのおみくじは、夫婦の運勢を占うおみくじなのだとか。

 僕たちは二人でその神社に出かけて行った。

 神社について、さっそくおみくじを買う。

 男女それぞれ一枚ずつ引く形式らしい。

 おみくじには大吉から大凶まであるそうだ。

 大凶をひかないようにしないとな、なんて思いながら僕はおみくじを引いた。

 ……え、なんだこれ。

 おみくじには「恐」と書いてあった。

 横でおみくじを見ている妻がはしゃぐ。

「わぁ〜吉だ。びみょー。どれどれ、どんなことが書いてあるのかな」

 おみくじを見ている妻に隠れて、僕はこっそり神社の人におみくじを見せた。

「あのぉ、これって……?」

「おぉ、これは珍しい! あまり出ないんですけどね、それは」

「ええと、これはどういう意味なのでしょう」

「その文字の通りですよ」

“恐”ということはつまり、恐妻の年、妻に頭が上がらなくなるということか……。

「え、何々ー?」

 妻がおみくじを覗き込もうとするので慌てて隠す。

「何よ、見せてよ!」

「だ、だめだって」

「見せなさいってばぁ!」

 僕は、襲い来る妻の手をなんとか逃れて、おみくじを神社の境内に結んで帰ったのだった。