小狐裕介の毎日SS

旅行堂での体験

 ふらりと出かけた散歩の途中、ある古本屋を見つけた。

 その古本屋は「旅行堂」という名前だった。

 入ってみると、奥から店主らしき男性が出てきて、言った。

「ここの本は、読むと旅行に行けるんですよ。1000円で読み放題です」

 僕は代金を支払い、試しに近くにあった本を手に取ってみた。

 どうやらエジプトに関する本らしい。

 エジプトの意外な見どころなんかが書いてある。

 ふむふむ、こんなところがあるのか。

 興味を引かれて読んでいると、いつのまにかエジプトの地に立っていた。

 おぉ、面白いなぁ!

 僕はエジプトの地を一人歩いた。

 あれ、この先には行けないな。

 もしかしたら、本に書いていないからかもしれない。

 エジプトの地を歩き回ると、いつのまにか旅行堂に帰ってきていた。

 一冊読み終えたらしい。

 面白いなぁ!

 僕はいろいろな本に手を伸ばした。

 おや、どうやらここは無人島らしい。

 どこの国の島なんだろう。

 そんなことを考えながら歩いていると、目の前にゾンビが現れた。

 おびただしい数のゾンビがこちらに迫ってくる。

「うわぁああ!!!」

 僕は必死に逃げ回った。

 すると、今立っている地面が上昇して、島の反対側が迫ってきて……?

 気がつくと、旅行堂に立っていた。

 店主が一冊の本を持ちながら言った。

「すみません。孫が悪戯で本のカバーだけを入れ替えるんです」