擦りむき防止クリーム

ショートショート作品
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「よし、でかけるか」

 僕は玄関でいつものクリームを塗った。

 僕は昔から転びやすい。

 小学生の頃なんていつも転んで膝を擦りむいていた。

 そんな僕に母がクリームを買ってきてくれた。

 それは擦りむき防止のクリームだった。

「擦りむいた後だと痛いからね」

 母はそう言って僕にクリームを塗ってくれた。

 クリームを塗ると、その箇所がすべすべになって擦りむかないようになるのだ。

 大人になっても僕は相変わらずよく色々なところを擦りむくので、今でもクリームを塗るのが習慣になっている。

 家を出て楽屋についた僕は、ここでもまた手などにクリームを塗った。

 いつもは塗り終わった後ちゃんとカバンにクリームをしまうのだが、その時はたまたま机の上に置きっぱなしにしていた。

 すると、やってきた相方が「お、よさそうやん。最近、唇ガッサガサやねん」と言いながらクリームを手に塗り、そしてリップクリームの要領で唇にも塗った。

「あ! やってくれたなぁ」

 僕がそう言うと、相方は不思議そうな顔をしてこちらを見た。

 その後、出番になったので僕たちは二人でマイクの前に立ったのだが、案の定、相方のギャグはことごとく滑ったのだった。

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