僕が手の包帯を取ってもらえたのは、物心がついてかららしい。
おかげで僕は未だに指をまともに動かすことが出来ない。普通の子どもならしているであろう、指を動かす練習をしてこなかったからだ。
僕の手が包帯に包まれていた理由、それは僕の指にある。
僕の指は、なんでもジグソーパズルに変えてしまう。
五本の指で同時に物を触ると、それが一気にバラバラのパズルになってしまうのだ。
パズルになったものはパズルを完成させると元に戻る。
元に戻るとはいえ、あまりにも危険だから、と両親は僕の手を包帯でぐるぐる巻きにした。
そして、物心がついて言うことを聞けるようになってから、初めて包帯を取ってくれたというわけである。
僕は両親に「絶対に五本の指で同時に物を触ってはいけない」と言われて育った。
だから僕はそれからもほとんどの時間、手に包帯を巻いて過ごした。
当然そんな状態ではまともな生活はできない。
僕はこの自分の特性に大いに苦しんだ。
学校に通ってみたこともあるのだが、普通とは違う僕は当然冷やかされる。恐れられる。
僕は学校には通えず、家で勉強を見てもらうことになった。
そのうちに僕はある考えにとらわれるようになった。
こんな世界なら壊してしまえばいい。何しろ、僕にはそういう能力があるのだ。
ある日、僕は外に出た。外の世界ではみんな自由に時間を過ごしていた。
僕は包帯を噛み切って、手を自由にし、それから手を伸ばして……自分の顔を触った。
これでいい。
僕は生まれてきてはいけなかったんだ。
僕がいなくなれば、父さんも母さんも幸せに……。
目を覚ますと、目の前に両親の泣き顔があった。
「なんてことをするんだ。なんてことを」
父も母も大声で泣いている。バラバラになった僕の頭を両親が元に戻したのだ。
両親は僕に「二度とこんなことはしないでくれ」と泣いて懇願した。
それから僕は考えを改めた。
どんな困難に見舞われようとも生き抜くと決めた。
そうして生きていく中で、意外なことが分かった。
僕の指がパズルにしてしまった物を元に戻すと、その物は以前よりも丈夫になるらしい。
そこで僕は非合法ではあるが外科の診療所をやることにした。
医者の技術ではどうにもならなかった人の体を一度パズルにして、それから元に戻す。そうすることで治すのだ。
もちろん僕は医師免許を持っていない。
だからあまりひと目につかないよう、僕は人里離れた場所で治療を行うことにした。
それでも噂を聞きつけて、患者は僕の元にやってきてくれた。
僕は、僕自身が生まれてきてよかったのか、その問の答えを持っていない。
しかしここで目の前の人々を一人ひとり救っていくことで、その答えのピースは埋まっていくのではないかと思っている。
今日も僕はピースを埋める為、ここで患者と向き合っている。
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