私は暇を持て余し、小高い丘の上にあるコヤギ博士の研究所に向かった。
コヤギ博士はいつも面白い発明をして私を楽しませてくれるのだ。
研究所につくと、コヤギ博士が研究所にある庭で何やら興奮しながら機械をいじくっていた。
それは一見すると洗濯物なんかを干す物干し竿に見える。
しかしコヤギ博士のことだ。きっと何かの発明なのだろう。
「これは物欲し竿だ!」
コヤギ博士は私に言った。
やはり発明品の一つらしい。
「この物欲し竿に、欲しい物を書いた半紙を吊るすとだな、なんでも手に入るのだよ。以前までは識字能力に難があってな、一文字間違って認識してしまって大変なことになったりしたが、もう大丈夫だ!」
博士はそう言って、半紙を一枚物欲し竿にかけた。
そこには「ツマ」と書かれており、私はそれを見て口をあんぐりと開けてしまった。
「何を驚いているのかね」
「いやぁ、意外なお願いだったもので」
「私だって伴侶が欲しいのだ。私の研究を理解してくれる、そんな伴侶が」
それは若干ハードルが高い気もしたが、黙っていることにした。
それから数日後、突然”ドーン!”という大きな音が鳴って、私は目覚めた。
まだ明け方だったが、町全体がざわざわと騒がしくなる。
私は、またコヤギ博士のところで何かあったのかと思い、研究所に向かった。
大急ぎでやってきた私に、コヤギ博士は言った。
「やはり識字能力に難があるらしい……。あれを見たまえ」
博士が丘の向こう、海がある方を指差す。
するとそこに、前まではなかった島が出来ていた。
ははぁ、なるほど。
「ツマ」と「シマ」を見間違えたのか。
「これじゃあダメだ。やはり成功は難しいようだな。これは壊してしまおう」
コヤギ博士はそう言って物欲し竿をハンマーで壊し始めた。
欲のない人だ。もう少しでうまくいくかもしれなかったのに。
まぁでも、これが完成したら悪用する者も出てきそうではあるし、博士の行動は正しいのかもしれない。
私は「コヤギ博士にいい人が見つかりますように」と祈りながら、新しく出現した島の見物に向かった。
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