夏の夜、良彦は姪の里子に言った。
「さとちゃん、面白いものを見せてあげる」
良彦と里子は二人で小さな山に登った。
良彦はストローを一本取り出すと、口にくわえて、その先を夜空に向けた。
それから良彦は、すぅっと息を吸い込み、夜空に輝く星々を吸った。
良彦は吸った星を吐き出して、里子の前に散らしてやった。
さらに良彦は口から星を輪っか状にして吐き出したり、鼻から出したりした。
里子はそれを見ておおはしゃぎである。
「でもおじさん、星を吸っちゃって大丈夫なの?」
「ほんの少しの間だから大丈夫さ。星はすぐに戻っていくからね。目が霞んだかな、とか、機械の故障かな、とか、そんな風に感じるだけさ」
それから里子が「私もやってみたい!」と言うので良彦は里子にストローを渡した。
里子はストローを夜空に向けて思い切り吸い込んだ。
と、星を一辺に吸い込みすぎたらしく、里子がむせて、その拍子に鼻から星が出てきた。
良彦と里子はそれを見てゲラゲラと笑った。
良彦と里子が山から帰ってくると、里子のお母さんが言った。
「二人ともどこ行ってたの? ほら、ニュース見て!」
テレビでニュースが流れている。
なんと、北極星がなくなったらしい。
「あ、さとちゃん!」
良彦が里子の鼻を指差す。
すると、そこに大きな星がぶら下がっていた。
良彦が取ってやると、星はフラフラと夜空に戻っていった。
その様子を見て、良彦と里子はまた大笑いしたのだった。
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