父親の仕事はヒーローインタビューだった。
様々な人に対するインタビューを依頼されて、それを行うのだ。
インタビューの対象となる人は、何かの功績を残した人の時もあれば、普通の人であることもあった。
父は依頼を受けると、インタビューの対象となる人について下調べをじっくりと行った。
サプライズ演出などにヒーローインタビューはよく使われた。
例えば結婚式などである。
友人などによって新郎新婦へのヒーローインタビューの依頼があるのである。
ヒーローインタビューを受ける人はみんな照れくさいような顔をしながらもどこか誇らしげなのだそうだ。
父は仕事にまっすぐな人だった。
しかし父は自分の仕事について「卑怯な仕事だよ」と卑下するようなことをよく言っていた。
「ヒーローインタビューをする時っていうのは、その人にとっていい時だからな。大変な時や落ち込んでいる時に寄り添えるような仕事をしている人のほうが立派だ」
父はそう言っていたけれど、私はそうは思わなかった。
父の仕事だって立派な仕事だ。
父が亡くなって、私は父の仕事を受け継いだ。
ただし、父とは少し違う形で、である。
私がインタビューをすると、そのインタビューをそばで聞いていた年配の女性が涙を流した。
もともと霊感のあった私は、亡くなった人に対してヒーローインタビューをすることにした。
最初は「嘘だ。ペテンだ」と言う人もいるけれど、インタビュー対象者しか知らないようなことを話すと、次第に耳を傾けてくれるようになる。
そして、中にはこうやって涙を流す人もいるのだ。
お父さん、やっぱりヒーローインタビューは卑怯な仕事なんかじゃないよ。
いつ何時でも人の心に寄り添える、立派な仕事なんだ。
そんなことを思いながら、私は今日もヒーローインタビューという生業を続けている。
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