花瓶の出会い

ショートショート作品
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 私は男性との出会いを求めてこのイベントにやってきた。

 女性同士や男性同士の出会いの場としても活躍しているらしいこのイベントは、ある特殊な方法で相手との相性を測ることができる。

「花束を持ってください」

 係の方に言われ、私は会場にある花束を手に持った。

 花畑の花はすべてまだ蕾の状態である。

 会場には、男性の用意した花瓶がずらりと並んでいる。

 私たちはその花瓶に一輪ずつ花を挿していく。

 蕾のままの花が花を咲かせた花瓶が相性のいい相手……ということらしい。

 すべての花を花瓶に挿し終え、私は別室で待機していた。

 後ほどやってきた係の方によれば、私の挿した花はどれも花が咲かなかったらしい。

 蕾のまま、変化がなかったとのことだ。

「どなたかと会ってみますか?」

 係の方に言われたが、私は「いえ……」と断って会場を後にした。

 後日、イベントを主催していた企業の方から電話があった。

「いつまでも枯れないんです!」

 電話口で係の方が興奮している。

 その方によれば、ある花瓶だけ、私の花が蕾のままでずっと枯れずにいるそうだ。

「会ってみますか?」 

 そう聞かれた私は「はい」と答えた。

 喫茶店で会った男性はとても地味な人だったけど、次第に私たちは打ち解けた。

 そして私たちは、時間が経つのも忘れて、いつまでも話に花を咲かせた。

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