盆泥棒

ショートショート作品
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 今年もお盆の時期がやってきた。

 私はご先祖を迎える準備を始めた。

 まずはナスと割り箸でご先祖が帰る為の”牛”を作る。

 これに乗ってゆっくり天国に戻っていただくのだ。

 さて、普通の家庭では迎えにはキュウリで作る”馬”を用意する。

 しかし我が家ではキュウリではなく大根を使う。

 この大根に……と、私が作業していると、確かに置いておいたはずの仏壇の砂糖菓子がいつの間にかなくなっていた。

 噂には聞いていたが、本当に出た。

 お盆の時期にやってくる「盆泥棒」である。

 他所様の家にやってきて飲み食いする、黄泉の国の泥棒。

 盆泥棒の姿は当然私たちには見えない。

 それをいいことに盆泥棒は盗みを働き、私たちはいつの間にか物がなくなっていることに後で気づくのだ。

 だが……よりによってこの家に盗みに入るとは。

 我が家は代々警察官の家庭だ。

 私の父も警察官である。

 とはいえ、いくら父と言えど見えないものは捕まえられない。

 そこで私は110番代わりの迎え火を焚いた。

 迎え火を焚くには少し時間が早いがいいだろう。

 これでもう盆泥棒は逃げられない。

 やがてやってくるだろう。

 屈強な祖父や、ご先祖様たちが。

 この大根と海苔で作った、特製の馬、もといパトカーに乗って……。

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