ある日の夜中、パソコンに向かってレポートを書いていると、窓の外がビカッと光った。
何事かと窓を開けたその瞬間、眩い光が部屋に飛び込んできた。
一瞬目の前が真っ白になって気を失いかけたけれど、なんとか持ち堪える。
部屋に異変が起こっていた。
蛍光灯がビカビカと明滅している。
そしてその蛍光灯の中を、光の球が飛び回っていた。
なんだろう……これ。
もしかして、流れ星……?
それとも小型の宇宙人?
なんだかよく分からないものが蛍光灯の中を飛び回っている。
どうしよう……出れなくて困っているのかな?
でもどうやって助けたらいいか分からない。
蛍光灯を割ればいいのかな?
しかし……届かない。
引っ越してから、脚立を買わなきゃなと思っていたのに、まだ買っていなかった。
私は途方にくれ、結局その日は部屋があまりにも明るいせいで一睡もできなかった。
翌日、大学でその話を友だちの鈴子にすると、鈴子はこともあろうに「アオく〜ん」とアオくんを呼んだ。
アオくんがやってくる。
「どうしたの?」
「あのね、ゆっこが家の蛍光灯を代えたいらしいんだけど、背が届かないんだって。アオくん手伝ってあげてくれない?」
なんてことを言うのだ!
「蛍光灯? いいよ」
え、いいの?
こうしてアオくんが我が家にやってきた。
嘘みたいだ。
鈴子は用事があるとかなんとか言って帰って行った。
「うわ……これはすごいね」
アオくんが蛍光灯を見上げて言う。
蛍光灯の中では、相変わらず光の球が明滅している。
昨晩の出来事は家に来る途中に話しておいた。
アオくんが私に尋ねる。
「取り外しちゃっていいかな?」
「あ、うん。気をつけてね。あ、これ使って」
アオくんが私の差し出した踏み台代わりの辞典やらなにやらの上に乗る。
それから蛍光灯に手をかけた。
と、その瞬間、蛍光灯が激しく光った。
「うわ!」
バランスを崩したアオくんがこちらに倒れてくる。
「危ない!」
私はアオくんを支えようとして、アオくんにぶつかった。
がしゃん、と蛍光灯が割れる音。
アオくんの影になってよくは見えなかったけど、割れた蛍光灯から光の球が飛び出して、窓から出ていった。
すると、部屋の中が薄暗くなった。
「ご、ごめん!」
アオくんが飛び起きながら謝る。
「ううん、全然大丈夫。アオくんは平気?」
「うん、俺は平気。あ……蛍光灯、割れちゃったね。ごめん」
「いいよいいよ。私、掃除するね」
「手伝うよ」
私はアオくんと一緒に掃除をしながら、さっき逃げていったのは、やっぱり流れ星だったんだな、と思う。
昨日、もしやと思って、蛍光灯の中の光の球に三回お願いをしておいたのだ。
さっき、アオくんがこちらに倒れてきた時、かすかにだが、私の唇がアオくんの唇に触れたような……。
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