僕の影がタスキをかけていた。
駅伝などでかける、あのタスキである。
もちろん僕はタスキなんかかけていない。
これが、あの噂の”影タスキ”か……!
影が突然タスキをかけるという影タスキの噂は聞いていた。
なんでも、影がタスキをかけると、不幸が訪れるのだとか。
僕はなんとか影のタスキを外そうとしたが、うまくいかない。
噂によれば、タスキはいつのまにかかけられて、いつのまにか外れるらしい。
こうなったらもう、時間が解決するのを待つしかない。
僕は自然とタスキが外れるのを待つことにした。
それから、僕の身に不幸が起こったかというと、そんなことはなかった。
それどころか、むしろ逆だったのである。
タスキがかけられてからの僕は、ツキにツキまくっていた。
とにかくいいことばかり起こるのである。
噂は所詮噂だな、と思っていたら、いつの間にか影のタスキはなくなっていた。
それからは特にツイていることのない、いつもの生活に戻った。
今にして思う。
あれは本当にタスキだったのだろうか?
もしや、噂は間違いで、あれはタスキではなく縄だったのでは。
禍福は糾える縄の如しということわざがある。
良いことも悪いことも、交互にやってくるという意味だ。
だとしたら、僕の次にタスキを受け取った人は……。
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