野良ポエム

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 大学に行くと、掲示板のところに人がたくさん集まっていた。

 同じゼミの友達を見つけたので「何かあったの?」と聞く。

「これ、野良ポエムかもって」

 友達が掲示板を指差す。

 掲示板に恥ずかしいポエムが書かれていた。

「野良ポエムって何?」

「え、知らないのー!? 今すごく話題なんだよ。ほら、町の壁とかに絵を描く画家がいるでしょ? その画家みたいに、誰かがこういうポエムを書いているって噂があるんだよ。それも世界中でね」

「へぇー!」

 興味を持った私はさっそく野良ポエムについて調べてみた。

 どうやら野良ポエムは先ほどのような掲示板だけではなく、電信柱などに書かれることもあるらしい。

 そして書かれたポエムはいつの間にか消えてしまうそうだ。

 それから私は野良ポエムを探して回った。

 すると、家の近所にある電信柱に野良ポエムを発見した。

 資料用に、とスマホで野良ポエムを撮影していると、なんとそのポエムが目の前でスーッと消えていった。

 なんなんだろう、これ……!

 こうした超常現象が好きな私は野良ポエムにすっかりのめり込んだ。

 毎日毎日野良ポエムのことを調べ、どこかに野良ポエムがないかと探し回った。

 今度の大学のレポートは野良ポエムのことを書こうかな、なんて考えていた頃、ゼミ室に彼がやってきた。

 彼は怒っていた。

 それはそうだろう。

 最近、野良ポエムを探すのに忙しくて、彼からの連絡を無視していたのだ。

 彼はいきなり言った。

「なぁ、俺と研究と、どっちが大切なんだよ」

「それは……」

 彼がため息をついた。

「もういい。分かったよ」

「え?」

「顔見りゃ分かる。別れよう」

 そう言って彼は私の前から去っていってしまった。

 フラれてしまった……。当然だよね。

 泣く権利なんてないのに、私の目からはポロポロと涙が流れた。

 顔を洗おうとトイレに行く。

 トイレにある鏡を見て、ギョッとした。

 私の顔にこんな事が書いてあった。

「彼のことは好きだけど、今は彼よりも好きなものがあるから。だから言わなくちゃね。辛いけど”さよなら”を」

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