帯電時短法

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 家に帰った私が机に触るとパチンと静電気が走った。

 木製の机でなんで静電気が……といぶかしんでいると、今度は洋服ダンスからもパチンと静電気が走った。

 触るところ触るところ、至るところで静電気が走る。

 さらには床もなんだかピリピリしているような?

 絶対おかしい。

「お母さん!」

「なぁに?」

「またおかしなこと始めたでしょ」

「あぁ、帯電掃除機能のこと?」

「なにそれ!?」

「家にあるものに電気を帯びさせてね、ホコリとかゴミが溜まるとバチッと静電気が走って取れるようにしてもらったのよ。しかも床に落ちたゴミは電気の働きで自動でゴミ箱に運ばれるのよ。便利だわぁ」

「ちょ、なにそれやめてよ! 物に触る度に憂鬱な気分になるじゃない」

「毎日掃除をする人間にとっては、その憂鬱よりも嬉しい機能なのよ」

「お母さんったら、いっつもそういう変なことにばっか手を出して」

「あんたねぇ! あんたに……」

 そんな言い争いをしていると、父が「どっちもどっちだよ」とため息をついた。

 お母さんとの小競り合いを終えた私はお風呂場に向かった。

 まったくもう、お母さんったら……。

 服を脱いでから浴室に入り、シャワーヘッドを触る。

 パチンッ! と静電気が走った。

 体から汚れが落ちる。

 私は服を着てから風呂場の床をシャワーで流した。

 私の体には微弱な電気が流れていて、こうするだけで体の汚れがすっかり落ちるのだ。

 いちいち毎日お風呂に入るなんて面倒くさいもん。

 さっきお母さんは「あんたに言われたくないわよ!」と言っていたけど、私のこれと帯電掃除機能じゃ全然違う。

 私のは「今からちょっと痛いぞ」と思いながらやれるけど、お母さんのは違うからだ。

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