星包みの手ぬぐい

ショートショート作品
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 私のひいおばあちゃんの、そのまたひいおばあちゃんが生きていた頃。

 我が家には「星包みの手ぬぐい」というものがあったそうです。

 ある夜、ひいおばあちゃんのひいおばあちゃん……まぁとにかくずっと前のおばあちゃんが、お母さんと一緒に山に登りました。

 お母さんが懐から手ぬぐいを取り出して、夜空にばぁっと広げてからそれをくるくる巻きますと、中に星が入っていたそうです。

 星はビー玉のようにコロコロ転がして遊ぶことができました。

 おばあちゃんがしばらく星で遊ぶと、お母さんが星を手ぬぐいにくるんで、夜空にばぁっと投げました。

 すると、星は元の場所に戻りました。

 当時、星の美しさに魅了されたおばあちゃんが、こっそり星を持ち帰ろうとした、なんてことがあったそうですが、その時おばあちゃんはお母さんにこっぴどく叱られたそうです。

 その時代は、星をちょっと借りて遊んでも大丈夫なおおらかな時代だったのかもしれませんが、その時の記録を参照すると、天文学者の文献に突然星が消える現象について書かれているそうです。

 まぁそんなこともありましたから、やがて星包みの手ぬぐいは、ないほうが良いと判断されたのでしょう。

 今では行方知れずになってしまいました。

 しかしその手ぬぐいが我が家に伝わっていた、という名残は残っています。

 私はお母さんがしているネックレスを見つめました。

 そのネックレスはお母さんがずっと前からしているもので、キラリと美しく光っています。

 ネックレスには、小さな小さな星が一つ入っているのです。

 その星は、先ほどのおばあちゃんの時代からさらにもっともっと前から我が家にある星なのでした。

 今では当時と形を変えて、アクセサリとして受け継がれている、というわけです。

「あ、また見てる」

 私の視線に気づいたお母さんが言いました。

「ちゃんと大人になったらあげるわよ。星を扱っても良い年齢になったらね」

 微笑むお母さんの首元で光る、美しいネックレス。

 私は、自分が大人になる日を、じっと夢見ているのです。

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