これはおじいちゃんに聞いた話だ。
僕の家の裏には小さな山がある。
その山は冬になると雪山になる。
おじいちゃんは昔、山に登って遊んでいたら迷ってしまったそうだ。
どうしたらいいか分からずうずくまっていると、おじいちゃんのそばに犬の足跡だけがさくさくとやってきた。
そこに犬がいると思ったおじいちゃんは、雪玉を投げた。
すると足跡は雪玉を追って駆けていった。
戻ってきた犬の足跡に、おじいちゃんは言った。
「帰り道を教えてくれないか」
すると犬の足跡が歩き始めた。
その後をついていくと、山を降りることができたらしい。
振り返ると、回れ右をした足跡だけが残っていたそうだ。
僕もその雪の犬を見てみたくて冬の山に登ってみたのだけれど、見つけることはできなかった。
僕は諦めて家に帰った。
帰ってきた僕に、妹が言った。
「お兄ちゃん! クッキー缶持っていったでしょ!」
そうだった。
もし犬に会えたらあげようと思ってお菓子のクッキー缶を持ち出したのだった。
しかしどうやら山に忘れてきてしまったらしい。
翌日、僕はクッキー缶を探しに山に入った。
昨日犬を探したあたりにクッキー缶はあった。
蓋を開けて中を見ると、何かが舐め回したように中身は綺麗に空っぽになっていた。
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