私は文芸の編集者をしている。
担当している小説家の先生を乗馬に誘った。
先生は「乗馬ぁ? なんで?」と面倒くさそうである。
私は言った。
「ほら、”三上(さんじょう)”とか言うじゃないですか。枕の上とトイレ、それから馬に乗っている時にアイデアが出やすいらしいですよ」
「それは昔の話でしょ」
先生はしぶしぶという様子で馬にまたがった。
馬はぽかぽかとゆっくり歩いた。
先生が唸る。
「う〜ん、浮かばないなぁ」
「そうですかぁ」
とその時、馬がぱかりぱかりと早く走り始めた。
先生が言った。
「お、おぉ、これはすごい! アイデアが次々出てくるよ!」
先生は馬の上で歓喜の声を上げた。
それから数日後、私はまた先生のもとを訪ねた。
原稿の進捗を確認するためだ。
先生の部屋に入って、私はびっくりした。
なんとそこに巨大なロデオマシンが置かれていて、その上に先生がまたがっていたのである。
先生は私を見ると言った。
「こうしているとアイデアがひらめきそうなんだ! もう少し待ってて!」
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