お祈り貝細工

　大学で好きな男の子ができた。

　ツンツンしているけど、なんだか優しいのだ。いわゆるツンデレという感じだろうか。

　私は男の子に言った。

「ねぇ、付き合ってよ〜」

　男の子は「やだ」と釣れない。

「なんで！」

「しつこいなぁ。じゃあ、これが開いたら付き合ってやるよ」

　彼はそう言って貝のようなものを取り出した。

「これは”お祈り貝細工”って言って、色々な使い方があるけど、今回はおまえが俺のことを思い続けたら開くようになってる」

「へぇ〜面白そう」

「面白そうって……。この貝は滅多に開かないんだぞ」

「大丈夫、開けてみせる」

　こうして私は彼から貝細工をもらって、来る日も来る日も貝細工に向かってお祈りを続けた。

　彼と付き合えますように、彼と付き合えますように……。

　そして、一週間後。

　突然、貝細工がぱかりと開いた。

　貝細工の中には可愛いブレスレットが入っていた。

　私は彼に開いた貝細工とブレスレットを見せた。

「ほら、開いたよ〜！」

「……そのブレスレットはやるよ」

「わ、やった！」

「じゃ、そういうことで」

　彼はそう言って行ってしまおうとする。

「ちょっと待ってよ！　これが開いたら付き合ってくれる約束でしょ」

「……でも、俺がお前のこと好きじゃないかもしれないだろ。そんな相手と付き合いたくないだろ」

「別にいいよ。好きにさせてみせるから」

「おまえなぁ……。分かった。じゃあ、おまえもそれ、俺に贈ってくれよ」

「それって？」

「お祈り貝細工。おまえがくれた貝細工が開いたら、付き合うってことで……」

　そんなわけで、私は彼に案内されて貝細工屋さんにやってきた。

　お店にはたくさんの貝細工が並んでいて、中に何が入っているかは開けてからでないと分からないらしい。

　私は散々迷った挙げ句、水色の貝細工を選んだ。

「お包みいたしましょうか？」

　お店の人に聞かれた私は包装を断って、貝細工を彼に渡した。

　すると、彼が貝細工を受け取った瞬間、貝がぱかっ！　と勢いよく開いた。

　店の人が「あらまぁ、すごい。こんなことって中々ないですよ」と驚いている。

　貝細工の中には、私がもらったブレスレットとペアの男性用ブレスレットが入っていた。

　彼は真っ赤になってそれを受け取ったのだった。