名無しの猫

ショートショート作品
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 ここに1匹の猫がいる。

 猫は名前を求めて彷徨い歩いていた。

 猫は人間たちから様々な名前で呼ばれた。

「タマ」

「ミケ」

「トラ」

 しかし猫はそれらを自分の名前だとは思わなかった。

 つけられた名前がするりするりと猫から滑り落ちていく。

 名前のない猫は名前を求めて世界中を旅して回った。

 そしてついに猫は自分の名前を見つけた。

 名付けてくれた者は、これまで聞いたどの名前とも違う名前で猫を呼んだ。

 名付けた者が猫を抱き上げる。

 猫は名付け親に連れられて空高く舞い上がる。

 こうして猫は、この星で唯一生き残った生物となった。

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