蘊蓄音機

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 彼の家に遊びに行くと、彼が「薀蓄でも聞く?」と言いながら、何やら機械を持ってきた。

「何それ?」

「薀蓄音機というものさ。こうしてスイッチを入れるとね……」

 彼が機械のスイッチを入れると、蓄音機から音楽ではなく、音声が流れ始めた。

『ゴリラの握力は推定500kg』

 そんな薀蓄が次々に流れる。

「この機械を持っていた人が吹き込んだり、窓の側に置いておくと薀蓄を集めてくれたりすることもあるんだよ」

 彼が嬉しそうに笑う。彼はこういう変なアイテムを集めるのが好きなのだ。

「面白いね」

 私は彼と一緒に『カバはライオンより強い』なんていう薀蓄を楽しんだ。

 数日後、彼が電話をくれた。

 なんだか様子がおかしい。

「どうしたの?」

「なんだか最近、薀蓄音機の様子がおかしいんだ」

「壊れちゃったの?」

「いや、そうじゃないんだけど。最近、こんな感じの薀蓄が流れるんだよ」

 彼がスイッチを押す気配がして、まもなく薀蓄音機の音声が聞こえてきた。

『ポメリア星とンゴゴンゴゴ星人は使っている言語が一緒』

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