コヤギ博士に呼ばれて私はコヤギ博士の研究所にやってきた。
コヤギ博士は私の顔を見るなりいった。
「面白いものを発明したよ」
「ほぅ、どんなものですか」
「その前にコーヒーでも一杯どうだい」
コヤギ博士がそう言ってコーヒーを淹れてくれる。
と、コヤギ博士が私の前にコーヒーを置いた瞬間、部屋が真っ暗になった。
「わ、なんですか!?」
「カップを持ち上げてごらん」
博士に言われて手探りでカップを探し、カップを持ち上げると部屋は元に戻った。
「そのコースターの仕業さ。そのコースターはカップに入れたものを映し出すんだ。コーヒーだから真っ暗になったというわけだ」
「へぇ〜、面白いですね!」
私は博士からカップを借りて、お土産にと買ってきたラムネを入れた。
ラムネの入ったカップをコースターに置く。
すると、部屋全体が空色になり、炭酸の泡が美しく輝いた。
「綺麗ですねぇ……。このコースター、部屋の外で使うとどうなるんですか?」
「この部屋くらいの広さにしか作用はないのさ」
「なるほど」
「そら、こうするとすごいぞ」
博士は新しいカップにトマトジュースを注いだ。
すると、部屋全体がマグマのように赤くうごめいた。
「まぁ、それだけなんだがね……」
博士はすでに興味がなさそうに言ってコースターをぽいっとそのへんに置いた。
博士の研究所には発明品が雑多に置いてある。
「博士、たまには掃除したほうがいいですよ」
私は博士にそう忠告して研究所をあとにした。
数カ月後。
暇だった私はまた博士の研究所に遊びに行くことにした。
研究所の前までやって来る。
すると、突然中から「ギャッ!」という叫び声が聞こえた。
「博士!?」
私が研究所の扉を開けて中に入ると、博士が泡を吹いて倒れている。
博士が叫んでいたくらいだから何かあるぞ、と心構えをしていなければ私も泡を吹いて倒れていたかもしれない。
なんと、研究所の部屋の壁を巨大な魚が泳いでいたのだ。
あたりを見渡して、ようやく私は合点がいった。
博士はどうやら最近金魚を飼い始めたらしく、机に金魚鉢が置かれていた。
そしてその金魚鉢の下にあのコースターが敷かれていたのである。
「だから掃除した方がいいって言ったのに……! 博士、起きてください!」
私はそう博士を揺さぶったが、博士は中々起きなかった。
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