焚き火を眺めながら僕はため息をついた。
一ヶ月くらい前から「夢に見たんだよね」と言われるようになった。
家族だけではなく、友人にも。
はてはインターネットでも、僕のことを夢に見たという書き込みを見かけるようになった。
匿名掲示板やSNSに、「この人を夢に見た」と僕の似顔絵が投稿されるのである。
一体何が起きているのか。僕はまず自分の頭を疑った。
病院に行くと、精神科の医師は唸りながら言った。
「う〜ん、気のせいだと思いますが……実は私も昨日あなたのことを夢に見たんですよね」
有効な治療法が見つかるわけもなく、僕は途方にくれた。
そんな時、僕のことを研究したいという人が現れた。
怪しい博士風の男だったのだけれど、一応脳科学の権威らしい。
僕は藁にもすがる思いで博士の研究を受け入れた。
しばらくして、博士は言った。
「あなたからは特殊な電波が出ているようです。夢に出る電波とでもいいましょうか……」
「夢に出る電波……?」
「えぇ。どうやらその電波は、近しい人から他の人へどんどん伝播していくようです。まるでウイルスのように」
「そんな……。一体どうしたらいいのでしょうか」
「そうですねぇ。対処法は、誰にも伝播しない場所にいること、でしょうか」
そんなわけで、僕は今、誰もいない無人島で暮らしている。
博士のおかげで僕の体質は難病認定をされて、お金を支給されているし、食料などの物資は定期的に届けられる。
だが、やっぱり元の生活に戻りたい。
僕は焚き火を見つめながら、みんなの元に帰れる日を夢見ている。
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