夢啓発の誘い

ショートショート作品
スポンサーリンク

 私は自己肯定感が低い。

 何かにつけ「自分なんか」と思ってしまう。

 そんな私に友達が「夢啓発いいよ」と言った。

「なにそれ?」

「夢の中で褒めてもらうの。しかもイケメンに」

「イケメンに!? どうやるの!?」

 友達は私に夢啓発のお店を教えてくれた。

 お店にやってくると、店員らしき女性が「夢啓発を受けるには、寝る前に飲み物を飲んでいただく必要があります」と言って飲み物のカタログを見せてくれた。

 ココアやホットミルク、ルイボスティーやフレーバーティーなど。

 飲み物によって、出てくるイケメンが異なるらしい。

 私はルイボスティーのルイくんを選んだ。

 夜、寝る前にルイボスティーを飲むと、夢にルイくんが出てくるようになった。

 ルイくんは、毎晩私の頭をなでて「きちんと毎日会社に行けて偉いよ」なんて言って褒めてくれた。

 ルイくんのおかげで、私は「自分なんか」と思わないで済むようになった。

 自己肯定感が高まると、いいことがあるらしい。

 私の仕事ぶりが素晴らしい、と、なんと社長から表彰されることになったのである。

 社長は表彰状を持ちながら「最近の君の活躍は本当にめざましいよ」と微笑んだ。

 取締役やその他の社員もみんな拍手をしてくれる。

「ありがとうございます!」

 私は笑顔で表彰状を受け取った。

 はっ、と起きると、みんな仕事をしていた。

 時計を見ると、なんと午後二時になっている。

 しまった、昼寝をしてしまったのか……。

 みんな、黙々とキーボードを叩いている。

 誰も起こしてくれなかったのが怖かった。


 
 その晩、ルイくんは夢の中で「睡眠をたくさんとれてえらいね」と微笑んだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました