焚き本屋

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 私は本を読むのが好きなのだが、本の捨て場に困っていた。

 古本屋に売るのはなんだか作者の人に悪い気がして気が引ける。

 かといって、捨ててしまうのも罪悪感がある。

 そんな時「焚き本屋」というものがあることを知った。

 焚き本屋に本を持っていくと、本を燃やす為に焚き続けられている火で本を焼いてくれるらしい。

 私はさっそく焚き本屋さんに行ってみた。

 焚き本屋さんは小さな小屋のような建物で、こんな小さい所で焼いているのか、と驚いたけれどそこはただの受付所だった。

 焚き本屋さんの建物の裏手に広めの空き地があり、そこで火は焚かれていた。

 焚き本屋さんは初めて利用する私に色々な話をしてくれた。

「ここで焼いた本の中身は、風にのって”風流小説”というものになったり、焼き終わった灰は栄養になって物語草の肥料になったりするんですよ」

「え、そうなんですか!?」

 昔、物語草が好きでよく摘んでいたので、なんだか嬉しい。

 私はさっそく持ってきた本を焼いてもらうことにした。

 家に帰ってきた私は、本棚を見て思わず「あっ!」と声をあげた。

 日記がなくなっている。

 間違って日記も燃やしてもらってしまったらしい。

 ショック……!

 日記は私が片思いをしている時につけている片思い日記なる代物だ。

 日記が風流小説や物語草の肥料になるのだとしたら、どうか物語の中の出来事だと思ってくれますように、と私は一人願った。

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