彼と一緒に食事をしに行った時、彼がワインを頼んだ。
「美味しいね」
と私が言うと、彼が言った。
「これは地ワインというもので、他のワインとはまるで違うんだ。コルクを畑に埋めて作るワインでね、その土地に寒暖差がある方が甘くなったりするんだよ。コルクを埋める地方によって違う味になるんだ」
「へぇ、面白い。作ってみたいね」
「そういう人のために家庭菜園用のがあるよ。二人で育ててみようか」
彼がさっそく地ワインの栽培キットを取り寄せてくれた。
すごく小さなコルクで可愛い。
さっそくコルクを埋めてワインを育ててみることにした。
一ヶ月後、目薬くらいの小さな可愛らしいワインができた。
彼と二人で飲んでみると、すごく苦かった。
彼が笑いながら言う。
「甘やかしすぎたのかもね。もうちょっとスパルタすると、甘くなったりするよ」
奥が深いものだなぁ。
あれから月日は流れ、彼とは別れてしまったけれど、私は今でもたまに地ワインを育てる。
小さなワインを見る度に彼を思い出す。
彼も私を思い出してくれる時があったりするのかな。
私が作るワインは、やっぱり少し苦い。
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