我が家の湿気取り

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 僕はなんとなく自分は結婚できないたちなんだろうなぁと思っていたのだが、そんな僕がなんと結婚することになった。

 不思議と気が合う女性が見つかったのである。

 しかし僕たちの家庭にはある問題があった。

 いつも、なんとなく家の中がじめじめしているのだ。

 おそらく僕たちの性格のせいだろう。

 僕も妻も性格が少しネガティブなのだ。

 僕は数少ない友人に「どうしたものか」と相談した。

 するとその友人は僕に、ある”湿気取り”を紹介してくれた。

 なんでもその湿気取りは普通の湿気取りとは違い、ジメジメした雰囲気を払拭してくれる湿気取りなのだと言う。

 僕はさっそくその湿気取りを我が家に設置してみた。

 すると、またたく間に我が家の雰囲気はカラッとしたものになった。

 湿気取りの効果を実感した僕は、会社にもこの湿気取りを設置してみようと思い立った。

 まずは会議室に設置してみる。

 僕の勤める会社の会議は何かとジメジメしたネガティブなものになることが多いのだ。

 湿気取りを設置すると、さっそく効果が現れた。

 会議内の空気がジメジメすることなく、なんとなくみんな前向きな意見を交わすようになったのである。

 僕はそのことを総務部長に報告した。

 すると総務部長は「それはいいね! 会社全体にも置いてみようか」と言った。

 総務部長と二人で会議室以外のオフィスにも湿気取りを設置してみる。

 結果、社内の雰囲気もジメジメしたものが消え、いい雰囲気が漂い始めた。

 
 しかしある日、事件が起きた。

 オフィスに専務がやってきた時のこと。

 普段は役員室にいる専務がオフィスをぐるりと回って、各課の課長や数名の社員を会議室に呼び寄せる。

 僕も呼ばれた。

 会議室には重苦しい雰囲気が漂っている。

 その専務は口が悪いことで有名で、課長を集めて開口一番「まったく、なってないよ。チッ」と舌打ちをした。

 するとその舌打ちで火が注いたように「なんだとぉ!」と、ある課の課長が叫びながら立ち上がり、専務の胸ぐらを掴んだ。

 それを皮切りに火が燃え上がるように会議室内は怒号でまみれた。

 すると、会議室の外から「うるせぇぞ!」という声が聞こえた。

 僕はそこでようやくこんな状況になった原因について思い至った。

 湿気取りを置きすぎたのだ。

 湿気取りのせいで会社内の空気が乾燥しすぎて、火がつきやすい状態になっていたのだろう。

「おまえがうるさい!」

「なにをぉ!」

「もう一回言ってみろ!」

 もはや手がつけられないほどに社内の空気は燃え上がり、その火はなかなか鎮火しなかった。

 そんな中でも冷静さを保っている何人かの社員による火消しの結果、社内に燃え広がった火はなんとか鎮火したが、僕は何事もやりすぎは禁物だと思い、社内に置いた湿気取りを総務部長と一緒に撤去した。

 自宅に帰った僕は、家の中の空気もカラカラと乾いていることに気がついた。

 これではちょっとした静電気のような言い争いでも発火してしまいそうである。

 僕は家の中に起きすぎた湿気取りをいくつか撤去した。

 会社では失敗したが、家では湿気の調整がうまくいったらしい。

 妻が「ねぇ、今日飲まない?」としっぽりと言った。

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