念願の彼氏ができたのだが、友達や周りのみんなからは「あんなのどこがいいの?」と言われてしまうことが多い。
確かに、そう言われる理由はなんとなく分かる。
彼との会話は、いつも最後が”落ちる”のだ。
例えばデートに言った帰りに、彼はこんなことを言う。
「今日は楽しかったね でもランチのお店が最悪だったけど」
いい感じの会話なのに何故か最後に気分が落ち込むようなことを言ってしまうのだ。
私に思いを伝えてくれる時も「好きだけど、僕なんかじゃね。君も嫌だろうし」なんて言う始末。
彼いわく、癖のようなもので直したくても直せないらしい。
そんなある日、私は彼とのデートで公園にやってきた。
彼が持ってきたボールでキャッチボールをしたのだが、彼とキャッチボールをしてみて、なぜ彼がいつもあんな話し方をするのか、その理由が分かった。
彼の投げるボールは何故かいつもフォークなのだ。
野球の変化球の一つで、打者の前で”落ちる”ボール。
何回投げても彼のボールはフォークになって、落ちてしまうのだ。
私はそんな彼とのキャッチボールを終えて、よし、彼のキャッチボールの投げ方を変えよう! と決心した。
休日を利用して公園にやってきた私は、本を見ながら彼のピッチングフォームやボールの握り方を改善した。
すると、いつもただ落ちるだけの球が落ちながら曲がった。
あぁ、それじゃあカーブである。
フォークからカーブになってしまった彼は「君と遊ぶのは楽しいけれど、パフェは好きじゃない」となんだかよく分からないことを言った。
休憩の後、練習を再開すると、今度はカーブではなく横に滑る球、スライダーになってしまった。
「君のことは好きだし、タオルの吸水性は大事だよね」
そんな訳の分からないことを言う彼を見て途方にくれる。
話題が横滑りしてしまっているのだ。
その後、めげずに練習を続けると、今度は変化が予測できないナックルボールになってしまった。
「今日はいい天気で、だから僕はおしるこが好きだし、君の家のソファは素敵だ」
完璧に訳の分からないことを言い出した彼と一緒に練習を続ける。
すると、見事真っ直ぐ球を投げられるようになった。
二人で喜びあったが、私は新たな悩みを抱えた。
彼は私と会う度に「君が好きだ!!!」と豪速球のストレートのように真っ直ぐに気持ちを伝えてくれるのだが、あまりの勢いに私のほうがキャッチしきれないのである。
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