山奥に、ある一人の陶芸家が住んでいた。
陶芸家が今日も焼き物をしようと作業場にやってくると、なんとろくろの上に生首が載っていた。
「うわーーー!」
陶芸家は文字通りひっくり返って驚いた。
そんな陶芸家に、ろくろの上の生首がぱちりと目を開けて言った。
「あ、どうもどうも。突然すみません。実は首がすり減ってしまいまして。新しい首を作っていただけないでしょうか?」
「えぇ!?」
「お願いします。もし作っていただけたらお礼をいたしますので」
「作るって言ったって……私が作れるのは陶芸ですよ」
「えぇ、それでいいんです。お願いできませんか?」
「わ、分かりました」
訳も分からぬままに陶芸家はろくろの上の生首の更にその下に土を用意して生首の為に首を作っていった。
「おほー、伸びる伸びる! さすが陶芸家の方だ!」
生首は陶芸家が作った土の首をにょろ〜〜っと伸ばして自由にやり始めた。
生首は首を伸ばし、外に出ていってしまう
「お、おい! あまりうろちょろせんでくれ!」
陶芸家はそう焦りながら伸び続ける首の土を追加していった。
にょろにょろと首は伸びていき、やがて出来上がった。
「やぁ、いい首を作っていただきまして!」
「でも体がないけど……」
「あ、体は彫刻家の人に作ってもらいます。ではでは!」
生首は長い首を器用に使いながら、にょろにょろと山から去っていった。
陶芸家はいつもの一日に戻った。
あの不可思議な首は、無事に体を作ってもらえただろうか。
陶芸家はそんなことを考えながら、お礼は本当にもらえるのかな、と、あの生首がやってくるのを首を長くして待っているのであった。
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