ホラ吹き星

ショートショート作品
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「北極星が2つになった!」

 そんな驚くべきニュースが世界中を駆け巡った。

 方角を知る時に参照されるあの北極星。

 その北極星が二つに分裂したというのだ。

 そんな世紀の大事件に世界中が沸き立ったが、数日後、北極星はまた一つに戻った。

 一体あの現象はなんだったのか。

 専門家による調査が行われたが、結局原因は分からなかった。

 そうこうしているうちに、今度は”明けの明星”こと金星が二つになった。

 またしても世界中は大パニックになったが、しばらくすると金星もまた一つに戻った。

 ある星が二つになって、また一つに戻る。

 そんな現象が相次いだのである。

 この星が二つに増える現象は、もしかしたら一つの星がもたらしている怪現象なのではないかという噂が流れ、その星は”嘘つきの星(ライアースター)”と呼ばれることなった。

 ちなみに日本ではもっぱら「ホラ吹き星」と呼ばれることになった。

 宇宙飛行士である私は、このホラ吹き星に行ってみたいと思った。

 宇宙船の技術も年々進化しているので、もし本当にホラ吹き星などという星があるとするならば、到達することも可能だろうと私は考えていた。

 そんな時、またしてもホラ吹き星が現れた。

 なんと月が二つになったのである。

 私はホラ吹き星に行ってみたいと宇宙航空局に願い出たが、どうしても許可が降りなかった。

 そうやってもたもたしているうちに月はまた一つに戻ってしまった。

 私は意気消沈したが、もしまたホラ吹き星が近くに現れた時、その時は必ず飛び立てるように根回しや訓練をしておこうと決意した。

 そんな決意から十年。

 ホラ吹き星がまた渡航可能な距離に現れた。

 ホラ吹き星は、今度は土星に化けていた。

 その頃には宇宙船の技術は飛躍的に向上しており、土星への渡航も可能となっていた。

 私はすぐに渡航の許可を得て地球を立った。

 できる限りの最速で土星に向かう。

 宇宙船は凄まじいスピードで土星に向かった。

 もうすぐだ……!

 しかし、私の願いも虚しく、到着寸前でホラ吹き星はまたその姿を消してしまった。

「一体、ホラ吹き星ってなんなんだ……!」

 私は宇宙船の中で一人悔しがった。

 しかしいつまでもここでこうしている訳にもいかない。

 地球に連絡を入れる。

「ホラ吹き星は見つからなかった。これより帰還する」

「了解」

 地球へのオートドライブをセットして、仮眠室へ移動する。

 ここに来るまでは興奮で眠れなかったが、今はどっと疲れが押し寄せている。

 私は地球に到着するまで仮眠を取ることにした。

 
 はっと目を覚ますと、地球に到着していた。

 宇宙船は宇宙ステーションではなく、どこかの海に漂着しているようだ。

 また自動運転の航路が少しずれたのだろう。システムはまだ完璧じゃないのだ。

 まぁこのまま待っていればじきに迎えが来るだろうと思い、私は宇宙船の中で助けを待つことにした。

 程なくして、迎えの船が近づいてきた。

 私が出発の準備をしていると、つけっぱなしにしておいた無線からこんな声が響いた。

「こちらヒューストン! シーカー6号挺、応答願う。現在地はどこか!? レーダーが君の船を見失っている」

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