私は丘の上にあるコヤギ博士の研究所を尋ねた。
コヤギ博士は変わった発明ばかりをしている私の友人である。
コヤギ博士の目はどろ〜んとうつろな時もあれば、らんらんと輝いている時もある。
今日はコヤギ博士の目がキラキラと輝いていた。
「素晴らしい発明ができたんだよ!」
コヤギ博士は目を輝かせながらそう言った。
「これは”開眼目薬”といってな、この目薬をさすだけで自分が極めたいとしている分野の能力を開眼できるのだ」
「おぉ、それはいいなぁ」
私はコヤギ博士の発明に感心した。
翌日。
また私がコヤギ博士を尋ねると、彼はうつろな目に戻っていた。
どうしたのだろう?
「あの開眼目薬だがね、全て裏の川に流したよ」
「えぇ!? それはどうして」
「あの目薬で開眼することができても、開眼する過程を経験していないと、その能力を後世に受け継ぐことができなくなる。ただ開眼してもダメなんだ。とんでもない発明をしてしまうところだったよ」
コヤギ博士はそう言ってから「目が覚めたよ」と遠い目をして笑った。
私はコヤギ博士の研究所を後にした。
と、丘から下る川から、何かが飛び立った。
それはすーっと空を飛んでいく……魚だった。
魚が、まるで鳥のように空を飛んでいく。
もしやあれは、何かに目覚めた魚ではないだろうか……。
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