バエサンキャク

ショートショート作品
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 彼女と一緒に、車でバエサンキャクを探しに行った。

 バエサンキャクとは、野生の三脚で、写真が映えるスポットに生息している。

 バエサンキャクにスマホを設置して写真を撮ると、いい写真が撮れるというわけだ。

 紅葉シーズンだったので、山に向かった。

 バエサンキャクがたくさん飛んでいる。

「すごーい!」

 彼女が嬉しそうな声をあげる。

 彼女と僕はそこらじゅうにいるバエサンキャクにスマホを設置して写真を撮った。

 すっかり日が暮れる頃になって、僕たちは帰路に着いた。

 暗い山道を帰っていると、道路にぽつんと一脚のバエサンキャクが立っていた。

 あんなところに? と思ったが、僕たちは車を停めた。

 夜景でも見えるのか、とスマホを設置してみるが、真っ暗で何も見えない。

 一応、ということでカメラのシャッターボタンを押した。

「あ」

 間違えてインカメラで写真を撮ってしまった。

 カメラモードを切り替えてもう一枚。

 やはり、何も映らない。

「帰ろうか」

 僕は彼女に言って、車に乗り込んだ。

 家に帰りつき、彼女と一緒に今日撮った写真を見ていると、彼女が顔面蒼白になった。

「どうしたの?」

「……これ」

 彼女が、恐る恐るという様子でこちらにスマホを向ける。

 先ほど、夜の道で撮った写真に女の霊が映っていた。

 それはインカメラで撮った写真で、女の霊が車に乗り込むところがはっきりと映し出されている。

「よく撮れてる」

 僕でも彼女でもない声が、部屋の中に響いた。

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