僕は父子家庭で育った子供で、いつも遊ぶ時は一人だった。
昔からそうだったから、特にそれを不幸に思ったことはない。
その日は夏休みで、僕は家で一人遊んでいた。
暑い日で、扇風機をつけていた。
「ワレワレハ宇宙人ダ」
どこからか、そんな声が聞こえた。
「誰!?」
僕は誰もいない部屋で言った。
すると笑い声のような声がした。
どうやらその声は扇風機から聞こえるらしい。
「誰ですか」
僕は扇風機に向かって尋ねた。
「宇宙人ですか」
重ねて尋ねると「チガイマス」という声の後に、何人かの笑い声が聞こえた。
どうやら相手は大人数らしい。
それから僕は扇風機から聞こえるおかしな声と話をした。
その結果、声の主は意外に近くに住んでいるらしいことがわかった。
「アソビニオイデヨ」
そう言われた僕は家を出て、声の主の家に向かった。
そこは大きな家で、庭の方からたくさんの子どもたちの笑い声が聞こえた。
僕はなんだか気後れして、インターホンが押せなかった。
思っていたのと違う子どもだって思われたらどうしよう。
そんなことを考えた。
帰ろうか、と思い引き返そうとすると「宇宙人の子だ!」と声がして、たくさんの子どもが家から出てきた。
子供の中には同い年くらいの女の子もいた。
そこはその子の祖父母の家で、夏休みの間に遊びに来ているらしい。
周りの子たちは親戚の子で、みんなで扇風機に向かって話して遊んでいたそうだ。
それから僕たちは、よく一緒に遊ぶようになった。
夏の間だけ、次の年も、また次の年も。
あれから長い時間が過ぎ、僕は結婚をして、妻と一緒にあの家に向かった。
自分たちの子供も一緒だ。
僕たちは親戚同士で話をしてから、子供を遊ばせておいた部屋に向かった、
子供は扇風機の前で何やらしゃべっていた。
あの不思議な現象は、世代を超えて受け継がれるらしい。
子供は今、誰と話しているのだろう。でも、それは僕たちが知らない方がいいように思う。
僕と妻は子供を残して、そっとその場を離れた。
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