ある日、歩いていると目の前を車が猛スピードで通り過ぎた。
危ないなぁ。だけど、デザインはかっこよかったな。
そうだ!
僕は先ほど見た車のデザインを思い出した。
よし、あのデザインでいこう!
以前から温めていた、まったく新しい車の企画。
いや、それはもはや車というよりもコンテンツだ。
僕が考えているのは”サーチエンジンカー”というものである。
その車について検索をされるとエンジンが動き出すという仕組みだ。
検索の熱量を回転力に変えるのである。
車は自動運転で走るようにする。みんなに検索してもらって、自由気ままに走る車、というわけである。
車のコンセプトはできていたのだが、デザインだけが決まっていなかったのだ。
これで解決だ。
デザインを決めた僕は猛スピードで車を作り上げた。
出来上がった車は満足行く出来であった。
車には車載カメラを載せ、「イマドコカー」と名付けた。
イマドコカーについて検索すると、今車が走っている場所の映像が見られるという仕組みだ。
僕はイマドコカーを走らせ、企画をリリースした。
すると、目論見通りイマドコカーは話題になり、面白がって検索してくれる人がどんどん増えた。
検索数が増えるに従って、イマドコカーのスピードが増していく。
ぐんぐんスピードを上げたイマドコカーは、ついに海の上を走り出した。
一体どこまで行くのだろうか。
検索数がさらに増えていく。
ものすごい速さになった。
す、すごい!
しかしある時、イマドコカーからの映像がふっとなくなってしまった。
GPSを確認してみても、地球上のどこにもイマドコカーが見当たらない。
どこに行ってしまったんだ!?
僕のところにイマドコカーの所在に関する取材がたくさん来たけれど、僕にだって分からないのだ。
あ!
もしかして……。
イマドコカーは検索をされすぎて、高速を超え、次元を超えてしまったのでは。
そう、僕がイマドコカーのデザインを着想した時に見た車。
あの車がイマドコカーだったのでは……。
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