夢中食

ショートショート作品
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「ダイエットしたーい」

 私が気の抜けた決意を口にすると、横に座っていたクラスメイトのユイが笑いながら言った。

「いいものがあるよ」

 ユイがそう言って見せてくれたのは、カプセルだった。

「何これ?」

「夢中食カプセル。今、流行ってるんだよ」

「へぇ」

「これを飲むと、夢を見るの。たくさん物を食べる夢。それに伴って、お腹も実際に膨らむの。カプセルの中にゼロカロリーの寒天みたいなものが入っているからなんだって。だからこれを飲んで寝て起きるとお腹いっぱいの状態で目が覚めるから、ご飯をたくさん食べなくて済むのよ」

「それで痩せられるんだ?」

「そう。それにね、今の人って全然睡眠時間が足りていないらしくて、食事をしないより寝ない方が健康に悪いって言われているから、健康にもいいカプセルなのよ」

「へぇ〜、いいね」

「試してみる? 何粒かあげるから試してごらん」

 私はユイからカプセルをもらって家に帰り、さっそく試してみることにした。

 カプセルを飲んでから寝ると私はごちそうを食べる夢を見た。

 ステーキ、お寿司、パフェ。

 夢じゃなかったらためらうくらいの量を食べた私は満足して目を覚ました。

 ユイの言ったとおり、ちゃんとお腹も膨れている。

 カプセルの使いすぎは禁物で、ちゃんとご飯も食べるようにとネットに書かれていたが、私はとりあえずその日の朝食は抜いて、お昼も軽くした。

 こういう便利なカプセルには得てしてデメリットもあるものだと思うけれど、ちゃんと現実でご飯を食べるようにすれば健康に害はないらしい。

 このカプセルのおかげでダイエットに成功する人が続出しているそうだ。

 
 しかし私は、そんな人たちがいる裏で、人間以外の動物が痩せてしまっていることを後に知った。

 その動物は、深夜、餌を求めてさまよう。

 しかし幸せそうにものを食べる夢を見る人間が増えてしまったので餌はない。

 人の悪夢を食べるバクは毎夜餌を求めて歩き回るが、やがてとぼとぼと帰っていくらしい。

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