幼い頃、物置で遊んでいる時に、一台のオルゴールを見つけた。
真っ黒なオルゴールで、なぜか細い糸でぐるぐる巻きになっていた。
糸を取り外し、ネジを巻いてみると、まだちゃんと音楽が鳴った。
それは聞いたことのない音楽で、聴いているとなんだか体がポカポカしてきた。
暖かくて、なんだかいい音楽だな、と思っていると、父親がやってきて「コラ!!」と私を大声で怒鳴りつけた。
父親は私からオルゴールを取り上げて、それをまた細い糸で巻き、さらにガムテープでぐるぐる巻きにした。
私は家に連れ帰られ、泣きじゃくる私に父親があのオルゴールについて話してくれた。
「あれは、前にうちの親戚が経営していたホテルに置いてあったものだ。音楽を鳴らすとオルゴールの周りの温度が上がるという不思議なものでな、冬は薪いらずで重宝したそうだ。だがある時、事件が起きた。子供がいたずらをして、オルゴールのネジを無理やり回したんだ。すると、オルゴールからすごい速さで音楽が鳴って、たちまちホテルのロビーは炎に包まれたそうだ」
私は父親の話を聞いて、あの真っ黒なオルゴールの姿を思い出した。
私が聞いた音楽の何倍もの速さで奏でられる旋律と激しい炎を想像し、私は身震いしたのであった。
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