学校帰りに、うちの畑でうちのじいちゃんが座りこんでいるのを見かけた。
じいちゃんは誰かと話している。
誰と……?
遠巻きに覗き込むが、誰もいない。
じいちゃん……とうとうぼけちゃったのかな。
夜、父さんに話をした。
「ねぇ、おじいちゃんが人参畑で誰かと話してたんだけど。誰もいないのに」
「はぁ? さすがにぼけるにまだは早いだろう」
「そうかなぁ……」
翌日の帰りにまた畑の前を通るが、今日はじいちゃんはいなかった。
昨日じいちゃんが座り込んでいたところを見ると、一本だけ人参がなくなっていた。
夜、父さんに聞いた。
「父さん、人参抜いた?」
「いいや」
じいちゃんが抜いたのだろうか?
翌日、学校がある噂で大騒ぎになった。
ひとりでに歩く人参を見たという生徒がたくさんいたのだ。
まさか……?
夜、父さんに噂のことを話した。
父さんは笑いながら言った。
「そんな馬鹿なことあるはずないだろう」
夕飯を食べ終えて、父さんが部屋に戻り、お母さんも皿洗いをしにキッチンに消えた。
すると、いつのまにかじいちゃんがそこに立っていて、僕のそばでボソっと言った。
「うちの畑で取れるのは人参だけじゃねぇからな」
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