高校からの帰り道を佐紀と歩いていると、若い男の人がカメラを構えて写真を撮っていた。
私は特に気に留めず通り過ぎようとしたのだが、男の人が話しかけてきた。
「ねぇ、君たち。写真撮ってもいいかな?」
私は断ろうと思ったのだが、佐紀は「え、どうしよう」とか言っている。
きっとこの人がイケメンだからだろう。
でも私は、いきなり写真をなんて怪しいなぁと思った。
どう考えても怪しい。なんだろう、この人。
男の人が言った。
「これは特殊なカメラなんだよ」
男の人はデジタルカメラを構えて私と佐紀を撮った。
「ちょっと……!」
私の抗議を無視して、男の人が佐紀にカメラの液晶画面を見せる。
「ほら、見てごらん」
見ると、佐紀と私の頭の上に花のつぼみがついている。
「わぁ、すごいですね」と佐紀。
男の人が言った。
「君たちは、何かが開花する前なんだね。大人を撮ると花が写ったり、咲かずにしおれているつぼみが写ったりするんだよ」
私は男の人に言った。
「ちょっと、そのカメラ見せてもらっていいですか」
「? いいけど」
私は男の人のカメラで男の人を撮った。
佐紀が今撮った写真を見て歓声を上げる。
「わぁ、お兄さんの頭の上、きれいな花が咲いてますよ」
私は男の人にカメラを返して、佐紀の手を引いた。
「行くよ」
「え、どうしたの?」
私は男の人から十分に離れたことを確認してから佐紀に言った。
「佐紀、知らないの。さっきのあの花、食虫植物だよ」
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