集積所に着いた。
そこに置かれたものを集積車に積み込んでいく。
これは夢の亡骸だ。
現世で捨てられた夢がここに集まる。
僕の仕事はそれを集めることだ。
同僚の杉崎さんと一緒に、集積所を回ってゴミの亡骸を拾い集めていく。
僕自身、現世にいた頃は夢なんてなかった。
そんな僕が死後、こんな仕事につくなんて。
皮肉だ。
亡骸を集め終わった。
あとは集めた亡骸を焼却炉に入れて終わりだ。
夢の亡骸はここにある白色の炎で燃やされてリサイクルされる。
焼却所に着き、僕が集積車を焼却炉の前に停めると、杉崎さんが言った。
「もう上がっていいよ」
「え?」
まだ夢の亡骸を焼却炉に落とす作業が残っている。
「あとは俺、やっとくから」
杉崎さんは僕に運転を代われという。
「はぁ、じゃあ」
僕は車から降りて、係員の詰所に向かった。
そこで帰り支度をして、一服してから詰所を出る。
ふと焼却炉の方を見ると……まだ杉崎さんがいた。
夢の亡骸もまだ焼却炉に落としていないようだ。
何をしているんだろう、と思いながら帰ろうとした時、詰所の電話が鳴った。
詰所の中にいる同僚が電話を取る。
同僚は詰所から顔を出して杉崎さんを呼んだ。
「杉崎さーん、お電話です!」
杉崎さんが走ってきて受話器を受け取る。
「うん、うん、わかった。やってみるよ」
杉崎さんは受話器を置くと、集積車の方に戻って行った。
僕は詰所に戻り、同僚に聞いた。
「あの……どうしたんですか」
同僚は「まだ帰ってなかったのか」と言ってから、質問に答えた。
「たまにあるんだよ。捨てたはずの夢を、もう一度……ってことがね。そんなの普通無視するんだけど、杉崎さんはね」
杉崎さんは集積車の開閉部分を開けて、泥だらけになって夢の亡骸を探している。
僕は集積車まで走って言った。
「ぼくも探します」
杉崎さんが顔についた泥を拭いながら言う。
「赤いやつだ、ちょっと楕円形の」
僕は杉崎さんに言われた夢の亡骸を探した。
二人で亡骸をかき分け、僕は底の方に楕円形の夢の残骸を見つけた。
「あった!」
夢の亡骸は弱々しくだが、まだ赤く光っている。
杉崎さんが「それだな。持ち主を探してる夢の亡骸は光るんだよ」と教えてくれた。
僕は、まだちかちかと光る夢の残骸を見て、この仕事なら現世で見つけられなかったものを見つけられるのかもしれない、と思った。
自分の夢なんかなくてもいい、人の夢の手伝いだっていいじゃないか。
「よくやったな。さぁ、それを持ち主に届けてやろう」
杉崎さんが満足そうに笑った。
コメント