今は我が商品開発部の打ち合わせ中である。
企画はもちろん、新しい商品について。
ここ最近、我が社はヒット商品に恵まれていない。
我が社の主力商品は、数年前に出した「忍者枕」というものだ。
この枕は、眠る時に使うと意図的に眠りを浅くできる。
何かあった時にすぐ目が覚めるのだ。
こんなもの誰が買うのか、と思われることも多いが、どんなものにも需要はあるものである。
つい眠りが深くなってしまいがちな消防隊員が買っていったり、学校の宿直室に納品されたりと、その用途は意外に幅広い。
絶対に浅い眠りで済むならばできるだけ寝ておきたい、という人はわりと多いのである。
「村山くん、どうですか」
そう言われて僕は額に当てていた右手を離した。
議長がこちらを見ている。
僕は「いい企画があります」と言いながら右手を全員に見せた。
そこには小指の爪ほどのクッションのようなものが貼り付けてある。
「これは超小型の忍者枕です。この大きさでも十分に同じ効果があります。事実、私はこの会議が始まってからずっと眠っていましたが、議長の言葉ですぐに目覚め……」
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