僕はその日、友達と近所の公園で遊んでいた。
鬼ごっこやケイドロなどをして遊んでいると、いつの間にかすっかり暗くなっていた。
「あ!」
突然、友達の一人が僕を指差して叫んだ。
なんだろうと思って僕が自分の姿を確認すると、なんと僕のズボンが光っていた。
いや……光っているのはパンツだ!
僕の光っているパンツを指差して、みんなが笑った。
僕はその日、逃げるように家に帰り、お母さんに抗議した。
「なんなの、この変なパンツ!」
「それは”蓄光パンツ”よ」
「なにそれ!?」
「洗った後、お日様に干すと光を蓄えることができるパンツなの。子供が夜道を歩いても大丈夫なように作られたいい商品なのよ。今にみんな履くようになるわ」
僕はため息をついた。
お母さんは流行り物をすぐ取り入れる癖があるのだ。
「こんなのダサくていやだよ!」
「光るのが嫌なら早く帰ってきなさい!」
こうなると、もう何を言っても駄目である。
僕は次の日からみんなと遊ぶのが少し憂鬱になったが、次の日から何故かみんな暗くなる前に帰ろうと言うようになった。
僕はみんなが僕に気を使ってくれているのだろうと思って嬉しかった。
しかし、みんなの様子をよく見ると、どうやら違うようだった。
そうか、みんな蓄光パンツを履くようになったんだ!
僕はみんなも同じパンツを履くようになって嬉しかったけれど、お母さんに言うと図に乗るから黙っておこうと思った。
そんなある日の夜。
僕はお父さんとお姉ちゃんと一緒にテレビでやっていた映画を見ていた。
その映画は宇宙人の映画で、どこかの惑星の宇宙人が宇宙飛行士に乗り移って人間を襲うという内容だった。
宇宙飛行士の被っているヘルメットが光って”CMの後、いよいよ宇宙人が登場!?”というところでお母さんに「もう寝なさい!」と怒られた。
「今いいところなのに!」
「夜ふかしは駄目よ」
「お姉ちゃんだって起きてるじゃん!」
「お姉ちゃんは中学生になったからいいの」
そう怒られて、僕はしぶしぶ布団の中に入った。
夜中、僕はおしっこがしたくなって目覚めた。
時計を見ると夜の十一時である。
まだ映画、やっているのかな。
布団から起き上がった僕は、自分の履いているパンツが光っていることに気がついた。
そっか、このパンツ、家でも光るんだ。
僕は部屋を出て廊下を歩いた。いつも真っ暗で怖い廊下が、今日はパンツのおかげで怖くない。
このパンツもいいところがあるんだなぁなんて歩きながらこっそりリビングの方を覗くと、リビングは真っ暗だった。
もう映画は終わってみんな寝ちゃったのかな。
そう思うとなんだか急に怖くなった。
と、その時。僕は背後に人の気配を感じて振り返った。
すると、そこに頭が光っている宇宙人が立っていた!
「ぎゃあーーー!!!」
僕が叫び声を上げると、宇宙人がかがみ込んで言った。
「おぉ、驚かせてごめんごめん」
それはお父さんだった。
「お、お父さん?」
「あぁ。なんか停電しちゃったみたいでなぁ。ちょっと借りてるぞ、これ」
そう言って笑ったお父さんは、僕の蓄光パンツを頭から被っていた。
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