お財布のお見合いをしてくれるところがあるらしい。
使っているお財布を見て、相性を調べてくれるそうだ。
お財布事情を調べるというわけだが、それはいわゆる蓄えや金銭感覚だけにとどまらない。
お財布を大切にしているか、どんな使い方をしているかなどまで見てくれるらしい。
だから、少なくとも一年以上使った財布じゃないとダメなのだとか。
鑑定士さんに財布を見てもらったところ、どうやら合う人がいるらしい。
鑑定士さんに繋いでもらったその人に会ってみる。
だが……正直、あまり好みのタイプではない。
会ってから一時間くらいした後、その人は言った。
「実は、物見遊山で鑑定してもらっただけなんです」
その人の財布は、古道具屋で買ったものらしい。
買ってからろくに使っていないもののようだ。
じゃあ、元の持ち主とは気が合ったのかな……。
その人と別れたあと、鑑定士さんから電話があって、謝罪された。
「これからは、きちんと持ち主を確認することにします。ところでもっと会う人が見つかったのですが」
私は、鑑定士さんに言われた待ち合わせ場所までやってきた。
するとそこに、鑑定士さんがやってきた。
鑑定士さんは言った。
「あなたのお財布と、僕の財布の相性があまりにも良すぎて、怖くて、言い出せなかったんです。すみません」
「一体、どんなところが合ったんですか?」
「ここです」
鑑定士さんがお財布を取り出す。
すると、そのお財布のカード入れに、おみくじが入っていた。
「僕も、初詣でひいたおみくじは絶対捨てられなくて、ここに入れちゃうんです」
鑑定士さんはそう言ってはにかんだ。
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