「爆弾牛乳」という牛乳が爆売れした。
なんでも、爆弾牛乳は”爆弾牛”という牛からとれるらしい。
その爆弾牛さえ飼育できれば、大儲けできるんじゃないか、と考えた僕は、爆弾牛を飼う方法を調べ上げた。
調べるのに苦労したが、僕は爆弾牛を飼っている農場を突き止めた。
さっそく農場に向かった僕は、農場主に爆弾牛を分けてほしい、と頼み込んだ。
農場主は僕に言った。
「牛の育て方を教えてもいいし、牛を分けてやってもいいけどよ、にいちゃん。何が目的だ」
僕は正直に答えた。
「お金が欲しいんです」
「そうか、そうだよな。で、金を稼いで、その金でなにがしたい」
「そうですね……。うまいものを食べて……」
「うんうん」
「旅行に行って」
「そりゃ無理だな」
「え?」
「爆弾牛にはある制約があるんだ。二時間ごとに搾乳しないと、牛が爆発しちまうんだよ。さらに悪いことに、一頭爆発したら連鎖的にすべての牛がお陀仏だ」
「そんな……」
「しかもな、爆弾牛は飼い主のところに来て爆発する習性があるんだ。それに、そもそも飼い主しか搾乳できないしな。つまり、爆弾牛を飼ったら、もう二度と牛から離れられないということさ。それでもやるか?」
それを聞いて、僕はすごすごと農場を後にした。
あの農場は、決して小さくなかった。
あの牧場主は、一人で数十頭の牛を搾乳しているのだろうか。
それともあの話は嘘だったのか。
本当だとしたら、あの男には腕が何本もあるとしか考えられない。
いずれにしろ僕には無理だ。
僕はもう二度と爆弾牛のことは調べなかった。
コメント